※術師4人が小学4年ぐらいのときの小話です

 

◆アカリと母とタツジと父◆


「アカリさん、今日はどこに行っていたのかしら。
またあの者達と遊んでいたのではないでしょうね?」

アカリの母が、アカリを鋭い目で睨む。

「今日は……数多達に私の力を見せつけて、
私の方が凄いんだって証明してやってて……。」

「つまり、あの者達と一緒にいたと、 そういうことですね?」

「…………」

「他の家の者に構っている暇があるなら
やるべき事はあったはずでしょう、アカリさん。
お婆様も呆れていましたよ」

「……はい」

「今日の課題はもう終わったのですか?」

「はいっ、終わってます」

「見せて御覧なさい。
少しでも不出来があれば、さらに課題を増やしますよ」

「…………はい」

 

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アカリは術の特訓を行う為、家の近所の空き地に来ていた。

しかしその足が少しおぼつかない。

(今日……ちょっと……気分悪い……)

(こんな感じ……時々ある……気持ち悪い……)

(でも……頑張らないと……お母様に見捨てられたら……)

(術を使って……えーっと……なんだっけ……)

(……っ……数多……助けに……きなさいよ……)

「おやおや、どうしたの。 ふらふらしてるよ〜」

「……え?」

アカリのそばに、派手な服を着た軽そうな男が寄ってくる。

「ほら、俺はタツジのパパさんだよ。怪しい男じゃないから」

「…………」

「気分悪いんじゃない?
術の訓練をしてるみたいだけど、やめておいた方がいいよー」

「やります……。やめられないので」

「お母さんの言いつけ?
あー……俺もあの人に忠告なんて出来そうにねえけどー。んー……」

「…………」

「でも、女の子がこんなに気分悪そうに してるのに、放っておけないよー」

彼はさらにアカリに近寄る。

「近寄らないでください」

「つめたっ。そんな顔も可愛いけど、とにかく休もう」

「いいですってば!」

「ふっふっふー。俺は大人だから君のような小さな子を
抱えるなんて超簡単なんですよー」

彼はアカリを軽々と持ち上げる。

「おっ……おろしてっ。はなしてーっ」

「パパさんは、フラれなれてるからなに言われても平気だもんね〜」

「なにをしているのかしら、東弥さん」

「げっ、奈敷様」

アカリの母が、いつの間にか2人のそばに立っていた。

「お母様……。わっ……私は真面目に……」

「奈敷さん、アカリちゃんがさあ、気分悪そうなんだ。休ませてやってくれよ」

彼はアカリを抱えたまま言う。

「私はアカリからそんなことを聞いていません。
その子が大丈夫と言っている以上、私の指示に従ってもらいます」

「奈敷さんがこの子に弱音言わせないように威圧してんでしょ?
そういうのやめなよ〜」

「あなたが奈敷の家の事に口出しする権利は、一切ありません」

「うへえー……」

「おろしてっ」

「アカリちゃん、無理しちゃ駄目だよ〜?
気分が悪いならお母さんにちゃんと言わなきゃ。
あのお母さん、他人の言うことは全然聞いてくんないんだから」

「私はっ……大丈夫だもの」

「そう言ってる口調が弱弱しいよ」

「アカリさんをお放しなさい、東弥さん」

「私はっ……お母様にがっかりされたくないのっ!」

「こんなちっちゃい子が……そんな事を……」

「東弥さん」

「……はいはい」

彼はしぶしぶアカリを地面へおろす。
するとアカリは不安そうな目で母を見た。

「…………お母様」

「アカリさん、己の体調管理も大切な事です。
そして万全の態勢で事に望まねば良い結果を得られない事も分かっているはず」

「…………はい」

「出来ないのなら出来ないと仰いなさい」

「……出来ます」

「おいおい……」

「できるったらできる!」

「…………」

「では、続けなさい。結果は必ず出すのですよ」

「…………」

 

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「なー……タツー……、アカリちゃんって普段どんな?」

ゲームで遊んでいるタツジに、横で寝転がってる父が話しかける。

「えー!? わがままでうるさくて好きじゃねー」

「女の子にそんなひどい事言うなよ」

父は息子の尻を叩く。

「いって! 叩くなよ、親父!」

「相談とかされた事ねーの?」

「ねーよっ! あいつそんな奴じゃねーもん」

「ふーん……」

「あれは駄目だなあー……駄目だよなあー……。
でもあの人、昔からああだしなあ。
子供が出来て、少しは丸くなると思ったのに……」

「なんだよ、親父」

「アカリちゃんには優しくしてやれよ」

「えー! ぜってーヤダ!」

「おりゃっ」

父はまたタツジの尻を叩く。

「いってー!」

「強がってるけど、あの子も大変なんだぞ。
そういうの分かってやってこそ、いい男になれるんだぞー」

「あんなの分かってやんなくてもいーし。
親父は女の事になるとすぐデレデレすんなぁ。
だから母さんにも怒られ……」

「タツ、明日の特訓で素振り2000回な〜」

「やだーっ!!」

 

 

おわり